屋根融雪

■ 屋根融雪について

屋根に積もった雪を加熱して氷(固相)→水(液相)へと状態変化させて除去するものです。屋根の種類と加熱の種類によりいくつかのアプローチがあります。

1.屋根融雪(板金葺き/パネル隠蔽式)

屋根板金の下に当社オリジナルの融雪パネルを敷設し、パネルに設けた溝に配置した配管内に熱源で加温した不凍液を循環させることで配管→パネル→板金→雪という順に熱伝導を起こして雪を融かします。
板金仕上げは瓦棒葺き(横配管)、横一文字葺き(縦配管)、縦ハゼ葺き(横配管)、平葺き(縦配管)などに対応しております。
新築の場合、板金の老朽化による葺替えを伴う場合、屋根勾配が急峻で露出配管式が選択できない場合、ランニングコスト低減のため露出配管を選択したくない場合などに採用されます。
板金下に配管を伏せ込んであるため温水の温度が下がりにくく、また放熱ロスが少ないことからランニングコストが比較的安くなる傾向があります。
施工事例数ナンバーワンで、当社の代表的な施工方法です。

施工事例1:パネル隠蔽式・横一文字葺き・縦配管

施工事例2:パネル隠蔽式・横一文字葺き・縦配管

パネル隠蔽式の標準的な施工例で横一文字葺きの屋根に配管を施したお客様です。奥の建物には綿帽子状の積雪がありますが、施工対象屋根の雪は均等に消えていることがわかります。

施工事例3:パネル隠蔽式・瓦棒葺き・横配管

瓦棒葺きの屋根に横配管を施したお客様です。気温が下がり細かな雪が密度を高めながら降っていますが、奥の建物と比較して分かる通り、施工した屋根には雪が積もっていません。

施工事例4:パネル隠蔽式・瓦棒葺き・横配管

施工事例5:パネル隠蔽式・瓦棒葺き・横配管

施工事例6:パネル隠蔽式・横一文字葺き・縦配管

施工事例7:パネル隠蔽式・瓦棒葺き・横配管


2.屋根融雪(板金葺き・折板葺き/SUS露出配管式)

屋根板金の上にSUS直管またはSGP直管を専用金具を用いて配置し、配管内に熱源で加温した不凍液を循環させることで配管→雪という順に熱伝導を起こして雪を融かします。
板金仕上げは瓦棒葺き(横配管)、横一文字葺き(縦配管)、折板葺き(横配管)などに対応しております。

施工事例1:横葺きSUS露出配管(落雪防止)

施工事例2:瓦棒葺き・SGP露出配管

既存住宅の屋根にSGP(白ガス管)を露出配管させて頂いたお客様です。SGPはSUSに比べて配管の剛性が高く、多少雪を溜め込んでもビクともしないのですが、溜めすぎると固く締まった雪の周囲だけがトンネル状に融ける「空洞化」現象が起こることが知られているので、注意が必要です。

施工事例3:さまざまな露出配管(せっぴ防止、カーポート屋根融雪など)


3.瓦屋根融雪(瓦葺き/銅管隠蔽式)

瓦屋根への融雪は多くが瓦表面への露出配管施工となり、主にゴム管やSUSフレキ管などを瓦表面に沿わせるように配置しているものが多いようですが、当社の施工では瓦の下に銅管を敷設する隠蔽式です。
瓦屋根融雪では瓦桟を嵩増しして野地板と瓦の間に細い銅管を配置するのですが、配管の抵抗が大きくなるため、1回路あたりの配管長を長くできず分岐数が多くなる傾向があります。

施工事例1:瓦葺き・銅管隠蔽式

お寺の瓦葺き山門屋根を融雪した事例。棟瓦や降り棟部分はヒーティングできず、雪が残ることとなった。(北越融雪)

お寺の山門(焼き瓦葺き)を融雪させて頂いたお客様です。
もともとの瓦を一旦撤去しながら配管を伏せ込み、元通りに瓦で葺き上げました。
山門などの場合、施工時にまくれない部分が多く、実際には富士山のように裾野が広がった部分だけに配管が入っているため、融かせる範囲は限定的です。
瓦の場合板金に比べて熱容量が大きいこともあり、灯油ボイラを熱源として採用しました。

施工事例2:瓦葺き・銅管隠蔽式

瓦葺きの大屋根のみを融雪させて頂いたお客様事例。(北越融雪)

瓦葺き屋根の意匠を残したまま融雪したいというご要望で大屋根のみ融雪させて頂いたお客様です。元々が瓦屋根の場合、板金に葺き替えて融雪することも多いのですが、こちらのお住まいでは瓦を残すことで重厚感ある佇まいが維持されました。


4.屋根融雪(板金葺き/W型屋根)

通常の住宅は切妻・寄棟・片流れなど建物の外壁より張り出した軒先に雪が滑り出す形状となっています。雪国ではこの軒先に滑り出した雪が軒樋を巻き込むようにせり出し(せっぴ)、その先端にツララが成長することもあります。このせっぴは建物の軒・垂木を損壊させる原因になるほか、時としてせっぴやツララはその下を通る通行人にとって凶器となる恐れもあります。そこでせっぴが発生する前に雪を処理するには、大きな熱エネルギーを投入する必要がありました。「W型屋根」はできる限り燃料を節約することとせっぴやツララによる被害を最小限に食い止めるため、屋根の軒先に三角形のダムを設けることにより移動してくる雪を受け止めながら融かす構造となっています。

施工事例1:W型屋根

左右両方の軒先に三角形のダムを形成し、W型屋根としたお客様です。
ダム内面(軒先に移動してきた雪を受け止める面)にも融雪パネルを敷設してあります。
屋根頂部(傘)から軒先に向かって徐々に積雪量が増えていますが、せっぴもツララも成長すること無く、上手にコントロールされています。

施工事例2:W型屋根

大屋根にダムを形成し、W型屋根としたお客様です。
相当の大雪でダムを乗り越えそうな分量の雪が積もりましたが、しっかりと受け止めています。
あとはこのままジワジワと融雪を続ければ春まで安心してお過ごし頂けます。


5.屋根融雪(板金葺き/M型屋根)

屋根外周部にパラペット、屋根中央部に内樋を設け、雨水と融雪水とを内樋により排水するバタフライ型の構造とするものを「M型屋根」と呼びます。
雪は両側の頂部から谷部の内樋へ向かって移動しながら屋根面で加温されて融けます。通常の勾配屋根に比べ、軒先にせっぴやツララを生じることが無いため、時間的な制約が緩やかであり、時間あたり放熱量を1/3程度に抑えることができます。
大変省エネになりますが、建物の構造そのものを制約するため新築時の施工でないと採用が難しい工法です。

施工事例1:M型屋根

住宅新築に伴い、屋根外周にはパラペットを回して中央部に内樋を設けたお客様です。
雪が滑り出さない構造になっていることもあり、熱源には地中熱ヒートポンプ(水平ループ式)を採用してランニングコストを抑えることに成功しました。


6.屋根融雪(板金葺き/二重折板式)

・事例1:二重折板式融雪(耐雪住宅)

屋根の3方にパラペットを配し、折板を上層+下層の2層で葺き上げるものを「二重折板式融雪」と呼びます。二層の折板間に施した配管で上層折板を加温するとともに、水上側にはわずかの気流溝を設けてせっぴ発生を抑制します。また水下側には温水供給管を配置し、軒先のせっぴ発生を抑制します。そもそもこの工法は耐雪荷重強度3mクラスの住宅に採用されることが多いのですが、耐雪住宅とはいえ大雪時には必要となる雪下ろしを行わずに済ませるために開発されました。十日町市で屋根面積100㎡ほどの住宅あれば、平年並みの雪で13~15万円ほどの灯油代が必要なところ、約1/3の5万円ほどと低コストで雪処理ができることが特徴です。

・事例2:二重折板式融雪(耐雪住宅)


7.屋根融雪(板金葺き/落雪誘発式)

屋根を急勾配として積雪量が多くならないうちに自然と滑落させるのが落雪屋根ですが、建物の構造によっては雪がつかえたり、滑りにくい部位が生じることもあり、加温によって積雪と屋根面との境界をわずかに融かすことで摩擦係数を下げ、落雪を誘発させる構造としたものを「落雪誘発式」と呼びます。

・事例1:落雪誘発式融雪(落雪屋根)

大屋根は落雪式。玄関の中門部分に大屋根とのダキがあり、雪が引っかかって落ちにくいことが想定された。玄関部板金下に電気ヒーターを隠蔽して、必要に応じて落雪を誘発する仕様とした。(北越融雪)

8.電気ヒーターネット露出式

融雪面積が小さい場合、配管設備や熱源機器を組み合わせると割高になる場合があります。そんな時は屋根面に直接電気ヒーターを固定して発熱させ、雪を融かす工法があります。

施工事例1:落雪をスムーズに

大屋根からまとまった落雪が道路に飛び出すことを心配してご相談頂いた事例です。
屋根中央に棟が存在することから、湿った雪が南北にまたがって溜まり、いよいよ重みに耐え切れなくなるころには相当量で落雪していたとのことでした。
屋根中央部を重点的に融雪し、雪が溜まる前に落雪するようヒーターを設置しました。

施工事例2:追加工事も軽装備で

大型建物の温水配管工事がほとんど終わるころ、塔屋の上を部分的に追加したいとのご要望があり、大面積であったことも幸いして電気ヒーターでの融雪追加としました。

■ 屋根融雪の施工要領

1.新築住宅の場合

上棟後、野路板にルーフィングを敷き込んだ状態で着手します。
墨出し→外周木・桟木設置→パネル敷設→銅管敷設→ヘッダー取付け→供給管延長・雨樋配管→熱源機器取付→センサー・コントローラー取付け→不凍液張り込み試運転調整
屋根板金は銅管敷設が完了すれば可能となります。
板金上には葺き方と勾配に応じて雪止金具を配置します。


2.既存住宅の場合

足場設置→既存屋根材撤去→野地板補修→ルーフィングを敷き込んだ状態で着手します。
墨出し→外周木・桟木設置→パネル敷設→銅管敷設→ヘッダー取付け→供給管延長・雨樋配管→熱源機器取付→センサー・コントローラー取付け→不凍液張り込み試運転調整
屋根板金は銅管敷設が完了すれば可能となります。
板金上には葺き方と勾配に応じて雪止金具を配置します。


■ 屋根融雪のポイント

  • 軒先・ダキなど雪が融け残りやすい場所は放熱量が多くなるよう配管密度を高めるよう設計します。
  • 横一文字葺きの場合基本的には縦配管としますが、軒先だけは雪庇を生じないよう横配管とします。
  • 屋根直下階の利用状況を調査し、利用率が低くなりがちな北側室直上は配管密度を高めるよう設計します。
  • 周囲の建物や屋根の方位を考慮し、冬の季節風が吹き付ける北西側は配管密度を高めるよう設計します。
  • 屋根面でのドリフトと小屋裏の熱が集中しやすいことを考慮し、頂部ないし傘部は配管密度を落とすか、配管を入れないよう設計します。

■ 他社様の施工による事例

事例1:外周部に雪が残ってしまった

他社様の施工によるムラ消えの事例です。屋根中央部は雪が融けているものの、軒先と妻側(ケラバ)に雪が残ってしまい、作業員の方が自ら屋根に上がって残った雪を人力で下ろしています。当社ではこのような状態にならないよう外周部まで配管を施し、特に軒先は配管密度を高める設計としています。

事例2:施工後数年したら不凍液が漏れ始めた

点検でお世話になっているお客様から「雨樋に不凍液が漏れている」とのご連絡を頂き、雪消えを待って屋根板金を剥がしてみました。すると案の定配管に穴が空き、不凍液が漏れ出していることが判明。アルミテープを剥がして確認していくと、架橋ポリエチレン管の一部が座屈してそこから不凍液が漏れ出していることがわかりました。片サドルで配管を固定していたようですが、温度変化による配管の膨張収縮が起き、サドルが一部外れて他方に伸び応力が集中して力の逃げ場無く座屈してしまったようです。この事例では架橋ポリエチレン管を使用していましたが、当社では屋根融雪の隠蔽配管においてなまし銅管を用います。両者の間には0℃→60℃で約10倍の膨張率差がありますので、このような事故に至ったものと考えられます。


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