雪対策は融雪計画だけにあらず 構造改修も並行した事例 │ 新潟県小千谷市

2021年の晩秋、小千谷市お客様から「路面融雪をしたい」とご相談がありました。さっそく現地調査にお伺いしてみると、大屋根からの雪が自然落下で小屋根に落ち、その雪をさらに人力で道路まで落として排雪する、という構造のお住まいでした。

降ったばかりの新雪は密度0.1t/m3程度とフワフワ、サクサクしていますが、上屋根から小屋根に落ちて積もっている雪は、自然積雪の上に上屋根からの雪がのしかかるため、とても重いうえに固く締まっていきます。

時としてその重さは新雪の5倍近く、0.5t/m3近くになることがあります。

これを人力で雪下ろしするというのが、いかに骨の折れる作業かというのは言うまでもありません。

まして今回ご相談のお客様は会社経営者であり、夜遅く仕事を終えて帰宅するころにはヘトヘトになっておられました。気力体力ともに万全の状態で雪下ろしに臨むのは中々難しいことだったのです。

しかも大屋根→小屋根、小屋根→道路と2段階で落としたガチガチの雪を、地面からの熱エネルギーだけで処理するには、放熱出力を相当大きく設計したとしても、うまく融かし切れない可能性が高かったため、何とか屋根雪は屋根の上で処理できないか、というアプローチで考え始めたのです。

小千谷市で平成の初めごろから開発が進んだ分譲住宅地。
大屋根道路側からの雪が直下の小屋根に落雪し、うず高く積もった雪は再度人力で除雪しなければならない。

そこで当初は「への字」型の大屋根を片流れ屋根に変更し、住宅裏手側に全て落としてしまおうかと考えました。
しかし具体的に建築的な検討を進めていたところ、当初案では落雪した雪が敷地境界を越えて隣地まで飛び出してしまうことが判明し、検討をやり直すことに。

最初に計画した、大屋根を片流れ改修して、全て裏手に落雪させようという計画。

それならば、と第二案として計画し直したのが以下の図面。
「への字」大屋根の道路側を途中から折り曲げるアイデアです。
折り曲げた大屋根と従来人力除雪が必要だった小屋根を融雪改修する計画にしました。

  • 大屋根から背後地への落雪は従来と変わらない
  • 熱エネルギーを加える面積は少ない
  • 小屋根の雪下ろしも道路に落とした後の排雪も心配せずに過ごせる

という成果を期待したものです。

第二案として計画し直した、「への字」大屋根の道路側を途中から折り曲げるアイデア。

うまく行ってくれることを期待して迎えた初めてのシーズン。お客様の使い方がお上手だったこともあり、悩みの種だった小屋根の雪はきれいになくなっていました。

エネルギー価格も、配管資材の価格も高騰し、環境負荷をどれだけ小さくするか、が問われている今日。

「力任せにエネルギーを加えて雪を融かす」というご提案ではなく「いかに永く快適にお客様がこの土地に住み続けられるか」を考えながら、お客様と共に歩んで行きたいと考えています。